効用最大化問題

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1.イントロダクション

さて、前章で学んだ効用関数と予算制約式を用いて効用最大化問題を解いてみましょう。ミクロ経済学では、家計、もしくは個人は自分自身の持つ効用関数を予算制約(もしくはそのほかの制約、時間制約など)のもとで最大化するように行動していると仮定します。この仮定の良し悪しの議論は置いておいて(上級編あたりでしましょう)、まずはこの仮定を認めて議論を進めてみましょう。少なくとも、この仮定が棄却されたとしても、この仮定を認めて学んだことが無に帰すことはありませんし、この仮定の善し悪しを議論するためにも、認めたうえでどのような結果を導き出すのかというのは知っておくべきことです。ですので、この仮定をみとめ、その行動を分析することで、人々の財に対する需要関数や労働の供給関数を導き出すことをしていきましょう。(需要曲線と労働供給曲線の導出は次の章で行います。)

2.効用最大化問題を解いてみよう

効用最大化問題はラグランジェ未定乗数法を用います。ラグランジェ未定乗数法がわからない方は条件付き最適化問題へ。もちろん偏微分指数計算もします。

では、まず初めに具体的な数値のもとでの計算例を見てみましょう。次に一般的に求め、それが図で表すとどうなるのかということと、そのことの経済学的意味を調べましょう。その次に、例題と、ラグランジェ未定乗数法で解けない代表的な関数として、線形の効用関数とレオンチェフ型の効用関数を紹介し、最後に代替の弾力性とCES関数を紹介します。

まず例題。今太郎君は1000円の所得を持っています。1本50円のコーラと1枚100円のピザをいくつ購入するかを考えています。コーラをx本、ピザをy枚とします。このとき太郎君の効用関数は



と表せます。太郎君の効用が最大になるコーラとピザの購入量はいくつでしょうか。

この問題を定式化すると



subject to 50x+100y≦1000

となります。しかし、前の章で効用関数の単調性を仮定しましたので、予算制約式で不等式が成り立ったまま、効用が最大化されることはありません。もしも成り立ってしまうとなると、効用を最大化しているのに、予算が余ることになります。しかし、その余った予算を用いてxまたはyの購入量を増加させれば、効用が上昇することになります。これは効用を最大化しているということに矛盾します。したがって、単調性が仮定される効用関数での効用最大化問題で、効用が最大化されているとき予算制約式では=が成り立っています。つまり所得を使い切っています。そのため、先ほどの問題の定式化を



subject to 50x+100y=1000

と書き換えられます。(小さな違いじゃないかと思われる方もいるかもしれませんが、等式か不等式かで、使う数学的手法が変わってくるのです。そして不等式のほうが面倒です)

※余談ですが、1度の買い物で予算を使い切ってしまうということに疑問を持つ人もいるかもしれません。1度の買い物で予算を使い切ってしまうのは、これが最も簡単なモデルだからです。もっと複雑にして、何度も違う時点でお買いものをする機会があるという「異時点間のモデル」を使えば1度の買い物で予算を使い切らず、貯蓄をするモデルができますし、お金それ自体から効用を得るというモデルを考えれば予算は使い切りません。もちろん、単調性の仮定をはずしてもそうなります。

この定式化された問題を解くには次のようにラグランジェ関数を定義します。



1階の最適化条件は







となります。一つ目から、



二つ目の式から



となります。λを消すためにこの二つの式の比をとります。



約分をすると(約分をしたいけど、指数計算ができない人は指数計算へ)



(価格の方だけ約分していないのはこの方が計算楽だからです。)整理すると



この式は効用を最大化するxとyの組み合わせの関係を表しています。この式を3つ目の式(つまり予算制約式)に代入すると



このxの値を先ほど導き出した、効用を最大化するxとyの組み合わせの関係の式に代入すると



となります。したがって、コーラ10本、ピザ5枚を購入することが太郎君の効用を最大化させるのです。

具体的な計算方法を理解したところで、次のページで一般的な式での計算を行っていきましょう!


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