効用最大化問題

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3.図による最適点の理解

それでは、具体的に予算制約のもとで、効用を最大化している点では、無差別曲線と予算制約線が接しているということを図であらわしてみましょう。

まず右の図のように3次元の図における効用関数と予算制約式を表してみましょう。まず、予算制約式で効用関数を垂直にきります。(右の図をクリックしてください。)予算制約が等式で成り立つとき(つまり予算をすべて使い切るとき)に達成可能な効用の組み合わせが、効用関数を垂直に切った切り口です。この切り口で、効用を最大化する点は上の図の点であらわせます。(右上の図をクリックしてください。)ラグランジェ未定乗数法で求めているのはこの点を達成できるx*とy*でした。では、この最適値を通る無差別曲線を見てみましょう。それは最適値の点を通るように水平に効用関数を切れば現れるのでした。(右上の図をクリックしてください。)その無差別曲線を地面に下ろし、(右上の図をクリックしてください。)その図を上から見てみましょう。(右上の図を2回クリックしてください。)そうすると、予算制約線と無差別曲線が接しているのがわかりますね。このように、予算制約のもとで、効用を最大化する点では予算制約線と無差別曲線が接しているのです。したがって、無差別曲線の接線の傾きであるMRSと予算制約線の傾きである価格比が一致しているのです。

4.経済学的意味

さて、効用を最大化している点では、MRSと価格比が等しい、ということでしたが、これはどのような意味をあらわしているのでしょうか。先に結論を述べると、主観的価値と市場価値が一致しているということを表しています。

限界代替率(MRS)とは、第二財で測った第一財の主観的価値を表していました。なぜならば、第一財を一単位得るとき、その人が第二財をいくつ手放してよいかという数値だったからです。一方で、価格比とは何を表しているのでしょうか。第一財の価格(Px)を第二財の価格(Py)で割ったものです。それはつまり、市場で第一財を1単位得るために、第二財をいくつ手放さなければならないかを表しています。たとえば、第一財が100円、第二財が50円だとしたら、価格比はです。第一財を得るためには100円必要です。そのため、第二財を2単位手放さなければならないのです。

したがって、MRSは第二財で測った第一財の主観的価値であり、価格比は第二財で測った第二財の市場価値です。したがって、効用を最大化している点では、主観的価値と市場価値が一致しているのです。

では、たとえば価格比とMRSが一致しないとき、どのようなことが起きるのでしょうか。

MRS>価格比の場合(予算制約線上で最適点よりも左上の場合)

このとき、市場で第一財を1単位得る場合、(Px/Py)個の第二財を手放すことになります。しかし、主観的価値としては、第一財を1単位得た場合、第二財をMRS個手放してもよいと感じているのです。(つまり、MRS個手放すとき効用が等しいのです。)今MRS>(Px/Py)ですから、第二財を手放してもよいと思う量より少ない量を手放すことで済みます。つまり、効用が等しい状態よりも(MRS−(Px/Py))個分、第二財を多く所有することができています。単調性より、より多くの財をもった方が効用が高いので、この人は第二財を(Px/Py)個手放し、第一財を1単位得ることで効用を高めることができるのです。したがって、MRS>(Px/Py)の状態では効用を最大化しておらず、第二財を手放し、第一財を得るという行動を起こすのです。(つまり予算制約線上を右下に移動)

MRS<価格比の場合(予算制約線上で最適点よりも右下の場合)

このとき、市場で第一財を1単位手放した場合、(Px/Py)個の第二財を得ることができます。ところで、主観的価値としては、第一財を1単位手放した場合、第二財をMRS個手に入れればよいと感じています。(つまり、MRS個手に入れれば効用が等しいのです。)今MRS<(Px/Py)ですから、手に入れたいと思う量以上に多い量を手に入れることができます。つまり、効用が等しい状態よりも((Px/Py)-MRS)個分、第二財を多く所有することができます。単調性より、より多くの財をもった方が効用が高いので、この人は第一財を1単位手放し、第二財を(Px/Py)個得ることで、効用を高めることができるのです。したがって、MRS<(Px/Py)の状態では効用を最大化しておらず、第一財を手放し、第二財を得るという行動を起こすのです。(つまり、予算制約線上を左上に移動)

つまり、最適点よりも左上にいた場合、右下に移動し、最適点よりも右下にいた場合、左上に移動するのです。したがって、最適点(MRS=(Px/Py))になるまで調整が続き、効用が最大化されるのです。

まあ、小難しく説明しましたが、MRS>価格比は第一財の主観的価値が市場価値よりも上回っていることを表しているので、第二財を手放して、第一財を得る、MRS<価格比のときは第一財の主観的価値が市場価値よりも低いために、第一財を手放して第二財を得る、ということを表しているにすぎません。


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