効用関数と予算制約

presented by P-suke

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1.イントロダクション

人々はなぜ消費をするのでしょうか。生活するために必要なものであったり、気分をリフレッシュするためだったり、用途はさまざまです。しかし、一貫して言えるのは、「消費」することそれ自体のために消費するわけではありません。消費をすることで、自分自身に何かしらの影響を与えるから、消費をするのです。食べ物を消費することで生命維持をしたり、洗濯機や車を消費することで生活を便利にしたりなど、消費そのものよりも、消費をすることで得られる何かのために消費をするのです。経済学ではこれらを消費による満足度ということで解釈し、効用(utility)という概念でその満足度を測ります。つまり経済学では、人々は効用(満足度)を得るために消費を行います。

これら満足度といっても、あいまいな表現ですし、人間にはいろいろな満足度があると考える方もいると思います。たとえば、人々を幸せにしていくことで自分自身が得られる満足度(もしくは幸福感)と、空腹時にリンゴを食べたときの満足度(もしくは幸福感)は同じ尺度で測れるものなのかどうか、という疑問はあります。しかし、これらの議論は効用という概念が用いられたころから最近までされていますし(ジェヴォンズやミル、アマルティア・センなど)、未だ議論に終止符が打たれているとも(私は)思いません。そして、これらの議論を理解するためにも、まずは消費が単に効用に影響を与えるという最も簡単な(基礎的な)考え方を理解することから始めたいと思います。

さて、この章では人々の消費行動を分析する上で必要な分析ツール、効用関数(utility function)予算制約式(budget constrain)という概念を説明します。次の章ではこれら二つのことを用いて、人々がどのように消費するかを説明します。

2.効用関数(1変数の場合)

消費が効用に影響を与えるということを数学的に表すためには効用関数というものを用います。まずは1変数の場合(つまり、1つの財)から考えましょう。(もちろん、世の中には無数の財があふれています。だから世界に1つの財しかないと考えるのは無理があるでしょう。しかし、いきなり無数の財がある場合を考えるのは難しいですし、少なくとも2つの財のケースを理解すれば、無数の財のある場合もその応用で理解することが可能です。だから、中級編では2財のケースまでしか説明しません。)

財が1つしかないわけですから、大事なのはその数量です。では、数量と満足度の関係を図であらわしてみます。財はピザにしましょう。

ピザを3枚もらった時、ピザを1枚もらった時の3倍うれしい人の効用関数を考えてみましょう。ピザ1枚の効用が1だったとします。そうするとピザ三枚の効用は3ですね。そうだと、下の図のように直線の式になります。横軸が数量、縦軸が効用です。


効用関数1

効用をU(utilityの頭文字)、数量をxとすれば、具体的な数式は



と表せます。このように数量と満足度の関係を数式で表すことができます。数量と満足度の関数(関係を表した数式)を効用関数といいます。上図のような数式や形で効用関数を表現できる人はピザを何枚もらっても、あたらしくもらったピザの満足度がはじめてピザをもらった時の満足度とまったく変わらないという人ですね。新しくもらったピザの満足度、というのをピザの限界効用といいます。「限界(marginal)」とは「追加的な」という意味です。だから、先ほどの表現を経済学風に変えると、「ピザの限界効用が変わらない人」という表現になります。このように、効用関数をどのような数式、形で表すかによって表現する人間像が変わります。では、あなたはピザを何度ももらう時に、いつも同じ嬉しさを感じるでしょうか?たとえば、ピザを3枚もらった後に新しく4枚目のピザをもらったときの満足度は始めにピザ1枚目をもらった時の満足度と等しいでしょうか?私は1枚目のときには空腹ですからとても嬉しいですけども、3枚食べた後にさらにもらうとなると、お腹がいっぱいですから、あまり嬉しくありません。このように追加的な満足度はだんだんと減少してくるということもあります。これを限界効用逓減の法則といいます。「逓減」とは次第に減少することです。では、限界効用逓減の法則を満たしている効用関数はどのように表せるのでしょうか。それは下の図のようになります。


効用関数2

で表現されている幅が、ピザが1枚増加した時の限界効用です。だんだんと減っていてっているのがわかりますね。このような形で表せる効用関数が限界効用逓減の法則を満たしている効用関数です。数式であらわすと、たとえば、





などです。しかし、まれにですがもらえればもらえるほど、追加的な満足度が増加していくということもあるかもしれません。たとえば、お酒。1杯目はおいしいが、何倍も飲んでいると酔いが回って、さらにおいしく感じることがあるなどです。そのときには下の図のように、先ほどの効用関数とは逆になっているはずです。


効用関数3

これを数式で表す例は





などです。また、形が特定できない場合、次のように効用関数を表現します。



これは財の数量が何らかの形で効用に影響を与えているということを表しています。形を特定しない場合を一般式といいます。経済学では、おもに2番目に説明した、限界効用逓減の法則を満たしている効用関数を用います。もちろん分析したい対象によって効用関数を変えることは自由です。一番、状況に適した効用関数を用いましょう。しかし、ここでは、限界効用が逓減する状態が最も一般的な状態だとして、限界効用逓減の法則が満たされている効用関数を前提に話を進めていきます。


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