効用関数と予算制約

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5.無差別曲線の形状

ここではまず典型的な無差別曲線の形を説明したのち、これら典型的な形の条件を外すとどのような無差別曲線になるのかを説明していきます。

典型的な無差別曲線の形状は右の図のような形をしています。この無差別曲線の特徴は

・右下がり

・右上にある無差別曲線ほど効用が高い

・原点に対して凸

というものです。通常、経済学で扱う無差別曲線はこれらの条件を満たしています。(たまに満たしていないものもありますから気を付けてくださいね。)それぞれの特徴を述べると次のようになります。

無差別曲線が右下がり

両方の財から正の効用を得るとなると必ず右下がりになります。

もしも、片方の財をゴミや公害の量、労働時間などの負の効用をもたらすものであるとすると、右の図のような右上がりの無差別曲線になります。この場合、左上の無差別曲線の方が効用は高くなります。

右上にある無差別曲線ほど効用が高い

これは単調性というものです。つまり、財があればあるほど効用が高く、飽和点がないということです。これは無差別曲線の導出に使った下の図で説明すると理解しやすいです。ある効用でスパっときると無差別曲線ができました。それよりも高い効用でスパッと効用関数を切ると新しい無差別曲線ができます。(下の図をクリックしてください)これは効用よりも高い効用をもたらしますし、それはさきほどの無差別曲線よりも右上にできているのです。

もしも、お酒を飲みすぎると途中から体調が悪くなるという例を扱おうとすれば右上にあるほど効用が高いというわけではなくります。右の図で表すようなある点までは効用が増加し、ある点から効用が減少するという飽和点が存在するということになります。なんか山の等高線のようですよね。山の高さを効用の高さに例えると、無差別曲線は山の等高線です。でも山で例えるのには限界があります。山は右の図のような飽和点のある無差別曲線のようにてっぺんがありますけど、どこまでも高いところまでいける飽和点がない効用関数、無差別曲線のような山、等高線ってないですからね。



原点に対して凸である

これは単品よりも組み合わせをより好むということを示しています。図で表すと右の図のようになります。

今(x1,y1)の消費点と(x2,y2)の消費点があるとします。その二つの点を結んだ直線がその二つの点をより組み合わせたものを表しています。(右の図をクリックしてください)この直線上を通る無差別曲線はすべて(x1,y1)と(x2,y2)を通る無差別曲線の右上にありますから、効用が高いのです。例えば、直線の上にある(x3,y3)という消費点をとるとこうなります。(右の図をクリックしてください。

 

これはさきほど説明した限界代替率という概念を使うと、無差別曲線が原点に対して凸であるということは限界代替率が逓減していることと同じであるということがいえます。したがって、通常の無差別曲線では限界代替率が逓減しているとします。これを限界代替率逓減の法則といいます。限界代替率が逓減しているのを図で表すと右の図のようになります。限界代替率は無差別曲線の接線の傾きですから、xが増加するごとに接線の傾きが徐々に減少していっていることがわかります。数式で表すと



ということになります。無差別曲線が原点に対して凸であることと限界代替率が逓減することが同値であることを証明するには少々骨が折れるので、ミクロ上級編ですることにします。

組み合わせるのが嫌いであれば原点に対して凹になります。私はグレープフルーツと牛乳を組み合わせて食べるのが大嫌いです。なぜなら牛乳が苦くなるからです。ショックを受けます。その場合無差別曲線は右の図のようになります。

無差別曲線が単調性を満たしている場合、「無差別曲線は交わらない」という性質をもちます。これを証明するためには、単調性と無差別曲線が持つ推移性を使います。「推移性を満たす」とはaとbが同じくらい好きで、bとcが同じくらい好きならば、aとcも同じくらい好きであるということを満たすことをいいます。ハンバーグとラーメンが同じくらい好きで、ラーメンとチャーハンが同じくらい好きだとします。このとき、ハンバーグとチャーハンは同じくらい好きだとしたら、推移性を満たします。ハンバーグよりチャーハンが好きだとか、チャーハンよりハンバーグが好きだということがあれば、推移性を満たしません。

では、証明をしましょう。今右の図のように無差別曲線が交わっているとします。aとbは同一の無差別曲線上にあるので、同じ効用水準です。また、bとcも同じ無差別曲線上にあるので同じ効用水準です。したがって、推移性よりaとcも同じ効用水準です。一方でc点はa点と比べて、両方の財の消費量が多いです。よって、単調性よりa点よりもc点の方が効用水準は高いです。しかし、これは先ほどの推移性による結論と矛盾します。これは無差別曲線が交わるという仮定を行ったために生じました。したがって、背理法より、無差別曲線は交わらないのです。証明終了。

以上が無差別曲線の形状に対するお話でした。これからのぴーすけ講座では基本的にさきほどの典型的な無差別曲線の性質・形状を満たすものを扱っていきます。理由は、ある程度納得のいく仮定であるのと、あれらの仮定を満たすといろいろと分析する上で都合がいいからです。最後に予算制約について説明してこの章を終えたいと思います。


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