効用関数と予算制約

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4.無差別曲線の性質

無差別曲線を図的に導いたところで、無差別曲線を使って議論を進めていきましょう。無差別曲線を扱う上で、新たに考える概念と無差別曲線の性質をまず学びます。初めの概念の導入は限界代替率(marginal rate of substitution)です。頭文字をとってMRSと略記することが多々あります。ここでもMRSと略記します。

ある財の限界代替率とは、何か他の財を1単位得たときにある財をいくつ手放してもよいかという概念です。ですから、y財のx財(1単位)に対する限界代替率と表現されたら、x財を1単位増やしたときにいくつy財を手放してよいか、ということです。つまり、x財のy財に対する限界代替率とはx財を1単位増加させたときにy財をいくら失ってもよいか、という概念です。(逆に、x財を1単位失ったときにy財を何単位必要としているか、という数値としてとらえてもOKです。)x財を1単位増加させたときにy財をいくつ失ってよいかという概念ですから、これはx財1単位の主観的価値をy財の数量で測った数値も表しています。つまり、ピザを1枚得たら、コーラを2杯失ってもよいと考えたのであれば、コーラのピザに対する限界代替率は2です。そして、この人にとってピザ1枚はコーラ2杯と同じなのです。

x財の数量をxとしてy財の数量をyとします。その時、x財のy財に対する限界代替率の定義を数式で表すと



となります。xの1単位を微小にとることになるので、厳密には



となります。定義式にマイナスがついているのは、限界代替率を正の値で表記するためです。(入門編の需要の価格弾力性と同じようにΔx>0ならばΔy<0、Δx<0ならばΔy>0であるためです。)また、y財のx財に対する限界代替率ということを明示したいとき



と書きます。(人によってはxyを逆にyxと書く人もいます。私はMRSxy派です。)

さて、限界代替率はx財を1単位得たときにy財を何単位失ってよいのかということを表しているわけですから、x財を1単位得たときに、y財をいくつ失ったら満足度がx財を得る前と変わらないのかと言い換えることができます。満足度が変わらないわけですから、これはつまり無差別曲線上の動きを表しています。



直感的には右の図のように1単位x財を増加させた場合、無差別曲線にたどり着くまで減少させるy財の数量がy財のx財に対する限界代替率です。しかし、「限界」ということは「追加的な」という意味でありまた「微分」という意味でもあります。基本的に「限界(marginal)」がついたら微分です。したがって、正確には限界代替率を図で表すと右下の図のようになります。つまり限界代替率とは無差別曲線の接線の傾きにマイナスをつけたものとなります。右下がりの無差別曲線のみを扱っているときは限界代替率とは無差別曲線の接線の傾きの絶対値といっても大丈夫です。



次に限界代替率を別の表現をしてみましょう。使う数学は全微分です。わからない方はぴーすけ講座経済数学の全微分へ。効用関数を



と表します。効用関数を全微分すると



となります。無差別曲線上での全微分を考えると、無差別曲線上では効用が一定です。効用が一定ならば、効用の変化分、つまり効用の差分も効用の微分も0です。したがって



となります。これは効用が一定となるdxとdyの関係、つまり無差別曲線上でのdyとdxの関係を表しています。この式を書き換えて



となります。左辺は無差別曲線上での接線の傾きに−をつけたものです。つまり、左辺は限界代替率を表しています。限界代替率はx財の限界効用とy財の限界効用の比率で表すことができるのです。したがって、



となります。

この式の直感的な意味を考えましょう。

限界代替率とはx財を1単位得た場合y財をいくら失ってよいかということを表しています。たとえばMRS=aだとして、x財の限界効用を1とします。そうすると、x財を1単位得た場合、y財をa失っても、効用が一定だということですね。x財を1単位得たわけですから、効用は1増えているはずです。そしてy財をa減らすことで効用は元に戻ったわけですから、y財をa減らすことによって効用が1下がっているはずですね。そうすると、y財1単位当たりの限界効用は1/aのはずです。これが上の式が意味することです。

効用関数が



であった場合、限界代替率は



となるわけです。(x,y)=(4,2)の時の限界代替率を求めよと言われれば



ということですね。このページでのポイントは効用関数が与えられたらMRSを導出できるようになる.ことです。それは効用関数を偏微分することさえできれば、あとはそれらの比率をとるだけなので簡単だと思いますよ。では、次のページでは無差別曲線の形状について学びましょう。その次に予算制約について学びます。


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