労働供給

presented by P-suke

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1.イントロダクション

この章の目的は、消費者の行動を購入のみではなく、労働供給までを考慮に入れたモデルに拡張することと、先ほど学んだ代替効果と所得効果をちょこっと応用してみることにあります。しかし、かなり単純なケースまでしか扱いません。詳しく行いたい方は労働経済学の本を見てみてくださいな。この章では、労働供給量、つまり、人々がどのようにして働く時間を決定しているのか、ということを今までの分析ツールを用いて分析してみます。初めに労働供給量の決定の問題を数式で表すこと(定式化)をします。次にそれを図を用いて説明し、最後に計算例をのせることにします。

皆さんは、賃金が上昇した場合、労働時間を増やそうと思うでしょうか。それとも労働時間を減らそうとするでしょうか。賃金が上昇したのですから、余っている時間を使って働こうとする効果(代替効果)もあるでしょうし、賃金が上昇したために、十分に所得があるために、労働時間を減らして、自分の時間を増やそうとする効果(所得効果)もあるはずでしょう。それを無差別曲線と制約式を用いて説明してみましょう。

2.問題の定式化

初めに問題の定式化を行います。今、分析したいのは「労働供給の決定」についてです。ここでの労働供給量は「労働時間」にし、賃金は「時給」だとしてみましょう。今、1時間多く働こうとした場合、1時間分の賃金を多く得ることができます。単に多くの賃金を得られることは嬉しいことですよね。しかし、多くの賃金を得られるからといって、可能な限り働き続ける、ということを人々は行いません。少なくとも私は見たことがありません。なぜなら、1時間多く働くことで、自分の時間を1時間減らしてしまっているからです。1日は24時間しかありませんし、睡眠や食事等で使う時間もあります。更に、自分の趣味やボランティアに用いる時間や休息に用いる時間も必要です。そこで、これらの「労働時間以外の時間」を「余暇(leisure)」とします。したがって、労働時間を1時間増やすことは余暇を1時間減らすということになります。つまり、労働時間を1時間増やして、多くの賃金を得ることは嬉しいけれども、自分の時間(余暇)を減らすことは嫌である。もしも、賃金を得る嬉しさよりも、余暇を減らす嫌悪感が強ければ、労働時間を増やすことはない。このような人々の「最適な労働供給量が決定される」単純なモデルを考えてみましょう。

まず、人々は消費と余暇から効用を得るということになります。したがって、



という効用関数を考えます。Cは消費,lは余暇を表します。どちらも正常財だとします。消費の変数が一つしかないのは、消費財が1つしかないことを示しています。つまり、単純化しています。消費財が1つしかないのは、生活品などの多種の財を一つのバスケットに入れられて、販売されていると考えます。もしも、複数の財がある場合を分析してみたい場合は、変数を増やしてみてください。消費財を必需品とぜいたく品の2種類にわけて、必需品の価格が高くなった場合と、ぜいたく品の価格が高くなった場合の労働時間の変化の比較、とか分析できると思いますよ。

次に制約式を考えましょう。人々は1期間のみの購入を考えているので、得た所得は全て消費に回します。したがって、消費財Cの価格をpとし、労働時間をL、賃金をwとすれば



という式に定式化できます。これはつまり、予算制約式ですね。左辺が支出額で、右辺が所得です。

いままでの消費のモデルでしたら、制約式は予算制約式のみでよかったのですが、今回は「余暇」も考えていますので、時間に関する制約式も導入しなければなりません。自分の持っている時間を24時間だとすれば、その制約式は



という制約式になります。つまり、労働時間と余暇の時間の合計は24時間だということですね。

したがって、この二つの制約式のもとで、効用を最大化する消費量と余暇を導きだせればよいということになります。(余暇がわかれば、24から余暇を引くことで労働時間もわかります。)定式化すると





となります。制約式をLについて代入してあげれば



と一つの式で表すことができますね。

具体的な数値計算は後でするとして、まずは次のページで図を用いて分析してみましょう。


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