労働供給

presented by P-suke

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3.労働供給の図による分析

では、先ほど求めた制約式と無差別曲線を用いて図による分析を行いましょう。さきほど求めた式はpC=(24-l)wというものですから、書き換えると

pC+wl=24w

という式になります。

これを2財モデルの予算制約式に照らし合わせると、消費と余暇という2財モデルであり、消費財の価格がp、余暇の価格がw、24wが所得であるというモデルになりますね。それを図で表すと右の図のようになります。縦軸が消費、横軸が余暇になっています。それぞれの切片は片方に0を入れれば求まります。余暇の切片が24であるのは、余暇の上限が24であることを意味し、消費の切片は、24時間すべて働いた場合に手に入る消費財の量を表しています。制約線の傾きは価格比、物価を賃金でわったものになっています。なお、このように賃金を物価でわったものを実質賃金といい、賃金wを名目賃金と呼びます。さて、この図に無差別曲線を記入し、最適点を表してみます。(右上の図をクリックしてください)そうすると最適な消費量と最適な余暇の時間が求まります。

労働時間は24から余暇の時間を引いたものですから、右上の図の場所になります。(右上の図をクリックしてください

次に、先ほど学んだ代替効果と所得効果について学んでみましょう。(代替効果と所得効果については前の章で説明しています。)

先ほどの状態から、実質賃金が上昇した場合右の図のようになります。まず代替効果をみるために、変化後の制約線をもともとの無差別曲線に接するように平行移動します。(右の図をクリックしてください)それが緑色の線です。したがって、緑いろの矢印が代替効果です。代替効果は余暇時間を減らし、消費量を増やしていますね。つまり実質賃金上昇による代替効果は労働時間を増やす効果です。

次に、所得効果を見てみましょう。(右上の図をクリックしてください。)消費と余暇は共に正常財ですから、緑色の線ともともとの無差別曲線が接した点から右上にしか移動しません。したがって、制約線上のオレンジ色のところに無差別曲線が接します。オレンジ色の場所に無差別曲線を接してみると賃金が上昇した場合の最適点が決定されます。(右上の図をクリックしてください。)そうすると紫色の矢印が所得効果になります。つまり、(正常財だと仮定したので当たり前ですが)所得効果は労働時間を減少させる効果になります。

つまり、実質賃金が上昇した場合、労働時間を増やす代替効果と労働時間を減らす所得効果の合計で労働時間が決定されるのです。つまり、代替効果(労働時間を増やす効果)よりも所得効果(労働時間を減らす効果)が大きい場合、実質賃金の上昇によって労働時間の減少が起きるのです。それが右上の図の状態です。また、実質賃金の上昇によって労働時間を増やすためには代替効果が所得効果を上回っていなければなりません。(右上の図をクリックしてください。)そのため、制約線上で赤色の部分ではなく青の部分で接している必要があるのです。(右上の図をクリックしてください)※私の作図の問題で制約線で赤が占める部分が多いですが、作図次第では青の占める部分が多くなったりします。通常、労働供給は実質賃金の上昇によって増加することの方がよく仮定されます。

尚、赤色の部分と青色の部分のちょうど間で接した場合(つまり、代替効果と所得効果の大きさが等しい場合)労働時間は実質賃金が上昇しても変化しないということになります。また、消費量は代替効果でも所得効果でも増えているので、実質賃金の上昇によって消費量は必ず増加することになります。つまり、たとえ実質賃金の上昇によって労働時間を減らすことになったとしても、実質賃金が上昇する前の消費量の水準を下回るほどまで労働時間を減少させることはないということです。

この図の分析でわかったことは

実質賃金上昇による代替効果→労働時間を増加させる。 実質賃金上昇による所得効果→労働時間を減少させる。

代替効果>所得効果 ⇒ 実質賃金の上昇によって労働時間が増加する。

代替効果<所得効果 ⇒ 実質賃金の上昇によって労働時間が減少する。

代替効果=所得効果 ⇒ 実質賃金の上昇によって労働時間は変化しない。

実質賃金の上昇によって消費量は増加する。

ということがわかりました。では次のページでこの無差別曲線による分析と、労働供給曲線の作図の関係を書きましょう。最後のページで労働供給の計算問題を行います。


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