代替効果と所得効果

presented by P-suke

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1.イントロダクション

ここでは、前章で述べた需要曲線について詳しく述べていきます。それは、価格上昇のときの需要量の変化を詳しく分析するものです。この分析により、需要曲線が右上がりになる現象についても詳しく述べることができますし、そのほか、賃金の上昇が労働供給量を上昇させるか減少させるのかという議論への応用などができます。代替効果と所得効果については、少々理解しづらい概念らしいので、章を一つ設けて詳しく説明していきたいと思います。

2.代替効果と所得効果の直感的イメージ

代替効果とは財の価格が変化したために購入する財の組み合わせを変更しようという効果です。また、所得効果とは、価格が変化したために所得が変化したと感じて、購入量を変化させる効果です。そして代替効果と所得効果を足し合わせた効果を全効果または価格効果などと呼びます。直感的な理解としての例をだしましょう。私は朝に缶コーヒー、昼にカフェオレを買います。缶コーヒーは120円で売っており、カフェオレは140円で売っています。とある朝、カフェオレが値引きされ90円で売っていました。その日は思わず朝は缶コーヒーではなくカフェオレを飲みました。(代替効果)昼は安かったので変わらすカフェオレを飲みました。夕方になって、ふと考えると、いつもなら朝120円、昼140円支出しているのに、今日は朝90円、昼90円しか支出しておらず、いつもより80円得していることに気付きました。そのため、夕方にもカフェオレを購入しました。(所得効果)

つまり、代替効果と所得効果によりカフェオレを2本多く購入したわけですね。代替効果が1本、所得効果が1本です。粗く説明するとこのような形です。この効果を無差別曲線と予算制約式を使って図的に説明してみましょう。

3.図による理解

まず、価格が下落した場合を考えてみましょう。今右の図のように最適点が決定されているとします。価格が下落した場合、予算制約線と最適点が右の図のように変化します。(右の図をクリックしてください)このx1財とx2財の需要量の変化(全変化)を代替効果と所得効果に分解しましょう。これには1本補助線を入れる必要性があります。それは、変化後の予算制約線に平行で変化前の無差別曲線に接する直線を引くのです。(右の図をクリックしてください。)そうすると価格比が変更されたため、同じ満足度を得るために消費する財の組み合わせが変更されています。(右の図をクリックしてください。)つまり、第一財の価格が下落したために同じ効用を得るために必要な財がx2財からx1財に代替されたわけです。これを代替効果と呼ぶわけです(緑の矢印)。さて、価格比の変化によって代替された効果を見ましたが、残っている効果は何でしょうか。よく見ると、需要量がh1,h2の場所から、価格が変化した後の最適点への変化は予算制約線の平行シフトです。(まぁ、平行シフトするように書いたわけですから)これはまさに所得の増加と同じ意味を表していますね。よって、この紫の矢印の変化を所得効果と呼びます。(右上の図をクリックしてください)つまり、第一財の価格の下落のうちで、あたかも所得が増加したかのような効果を表しているわけですね。

このように全効果を代替効果と所得効果に分解することができます。数式で見るためにはスルツキー方程式を学ぶ必要性があります。

ところで、代替効果ですが、第一財の価格が変化したために第一財の需要量が変更する代替効果と第二財の需要量が変更する代替効果があるみたいですね。このとき、第一財の価格が変化した場合の第一財の需要量が変化する代替効果を自己代替効果といいます。第二財の価格が変化した場合の第二財の需要量が変化する代替効果も自己代替効果です。つまり同じ価格と財だったら自己代替効果です。一方で、第一財の価格が変化したときの第二財の需要量が変化する代替効果と、第二財の価格が変化したときの第一財の需要量が変化する代替効果を交差代替効果と呼びます。つまり、ある財の価格の上昇が異なる財に与える代替効果ですね。ちょっと注意しておいてください。

さて、次のページでは、この代替効果と所得効果の分析で何がわかるのかを説明していきます。


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