ミクロ経済学の質問1 規模の不経済の定義について
規模の不経済の定義について一つ質問を受けました。
「規模の不経済の定義について、『生産量の増加に伴い長期の平均費用が増大すること』という定義と『限界費用が逓増すること』という定義を見ます。これらの定義の対応関係はどのようなものなのでしょうか」
というものです。これの答えは、「生産量が0のとき」という条件のもとでなら、「限界費用が逓増」すれば、「平均費用が増加」します。つまり、
です。生産量が0のとき、長期の費用関数なら費用は0です。つまり、限界費用の逓増の方が、長期の平均費用が生産量の増加に伴って増加することよりも強い条件であるということですね。
一般的には、規模の不経済の定義は『生産量の増加に伴い長期の平均費用が増大すること』です。しかし、限界費用が逓増することを満たせば、規模の不経済であることは十分に述べられるということなのです。
さて、証明してみましょう。
c(y)を費用関数とすれば、平均費用は
と表せる。一階微分をとると
である。つまり、
である。したがって、
を証明すればよい。
ところで、費用関数をでテーラー展開すると
である。今y=0とすると
第一項と第二項を移項して
これは任意の正のに関して述べることができる。したがって
つまり、生産量の増加に伴って、平均費用が増加しているということである。
証明終了
証明を見てわかると思いますが、数学的には、c(0)=0ではなくc(0)≦という条件に弱めても成り立ちます。ちなみに、逆は言えません。尚、規模の経済についても同様の論法でできます。しかし、その際はc(0)=0または、c(0)≧0という条件とc"(y)<0という条件が必要になります。