弾力性

presented by P-suke

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4.需要の交差価格弾力性

さて、今までは価格、所得の変化に対する需要量の変化を見てきました。次に「他の財の価格」が変化したときに、需要量はどう変化するのかということを学びます。例えば、コーラの価格があまりにも上昇したら、サイダーの価格が変わっていなくてもサイダーを買う人が増えると思いませんか?このようにコーラの価格が上昇したときサイダーの需要量が増加するならば、サイダーはコーラの代替財であるといいます。厳密にいうと粗代替財といいます。つまり第2財の価格が上昇したとき、第1財の需要量が増加すれば、第1財は第2財の代替財です。(厳密にいうと代替財とは代替効果が負である財なのですが、代替財を価格と需要量の関係で使っている本もあります。きちんと分ける場合、学術的に扱う場合は粗代替財という表現を用います。詳しくは中級編で。)

一方で、例えば、野球のボールの値段がひとつ1万円になったならば、野球をする人が少なくなって、グローブやバットの値段が変わらなくても、グローブやバットを購入する人が減少するということもあります。このようにボールの値段の上昇したときにグローブ(バット)の需要量が減少するならば、グローブ(バット)はボールの補完財であるといいます。厳密にいうと粗補完財です。つまり第2財の価格が上昇したとき、第一財の需要量が減少すれば、第1財は第2財の補完財です。(厳密にいうと補完財とは代替効果が正である財なのですが、補完財を価格と需要量の関係で使っている本もあります。きちんと分ける場合、学術的に扱う場合は粗補完財という表現を用います。詳しくは中級編で。)

さて、ここまで財の分類の話を交差価格弾力性を用いて考えてみましょう。需要の交差価格弾力性とは、第2財の価格をP'、第1財の需要量をDとすると、(あ、第1、第2っていうのは、それぞれが違う財だよぉって意味でつけています。)



となります。数値例は省略します。第2財の価格が上昇したときに第1財の需要量が増加すれば、交差価格弾力性は+になりますし、第2財の価格が上昇したときに第2財の需要量が減少すれば、交差価格弾力性は−になります。つまり、

交差価格弾力性が+ならば第1財は第2財の(粗)代替財である。

交差価格弾力性が−ならば第1財は第2財の(粗)補完財である。

ということになります。また、通常、代替財が多い財ほど価格弾力性がより弾力的になります。なぜかというと、価格が上昇したときに、その財を買わずに他の財で代用できる機会が多いからです。逆に代替財が少ないように財を指定すれば、その財はより非弾力的になります。例えば、財をバニラアイスクリームとすれば、バニラアイスクリームの価格上昇は他のアイスクリームに逃げられてしまいますが、財をバニラアイスクリームを含むアイスクリーム全般、と指定すると、アイスクリーム全般の価格上昇が起きても、代替財が(少なくともバニラアイスクリームより)少ないためバニラアイスクリームよりも低い弾力値になります。つまり、指定した財の範囲が広ければ、より弾力的になるということです。それでは、需要の交差価格弾力性の説明はこれで終わりにしますね。

5.供給の価格弾力性

供給の価格弾力性は価格が1%上昇したときに供給量が何%上昇するのかという数値です。計算方法や弾力的、非弾力的などの考え方もほとんど同じなので、ここでは定義だけ載せて終わりにしますね。



6.時間と価格弾力性

さて、今まで弾力性を学んできました。それら弾力性を扱う上で少し留意したいことがあります。需要だけじゃないんですけど、需要の価格弾力性が一番わかりやすいのでそれを例にします。

それは時間と需要の価格弾力性について。短期的な時間で測った弾力性よりも長期で測った弾力性が高い値になる。つまり短期よりも長期のほうがより弾力的なのです。例えば、ガソリンの価格がとても上昇したとします。しかし、ガソリンは今では必需品ですので短期的には需要量はあまり減少しません。せいぜいできて、車に乗る機会を減らし、バスや電車を多用するくらいです。しかし時間が長くなれば、エコカーを購入することも可能ですし、ガソリンを使用しない手段が増えます。したがって、時間が長いほど価格の上昇に対応できるので、より弾力的になるのです。

ここで学んだ弾力性は全部貨幣単位、円やドルが分母にきているんですよね。でも基本的に「AのB弾力性」という言葉を見たら、Bが1%変化したときにAが何%変化するのかという数値です。つまり定義にすると



となります。入門編ではここで紹介した4つの弾力性しか扱いませんが、ミクロ経済学の中級編やマクロ経済学においては他の弾力性もでてくるので覚えておくと楽ですよ。投資の利子弾力性を求めなさい、とか、消費の租税弾力性とか、定義書かれてないのに問われますから(笑)それでは、この章はこれで終わりにしたいと思います。


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