弾力性

presented by P-suke

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3つめ 弾力性の近似値

はじめの方で、変化量が十分に少なければ、価格の上昇によって、弾力性が1より大きいときに総収入が減少し、1と等しい時に総収入が等しく、1より小さい時に総収入が上昇すると説明しました。その数式的な説明をしたいと思います。

変化率が大きいとき、これらの説明は成り立たないときもあります。それはつまり弧弾力性では成り立たないことがあるという意味です。点弾力性では常にさきほどの説明が成り立ちます。

弾力性が1より大きい、1と等しい、1より小さいというものを数式で表現すると







となります。一番右の式は価格の変化率と需要の変化率を加えた値がそれぞれ0より小さい、等しい、大きいということを示していますね。次に総収入の変化率を考えます。(全微分という数学を使います。知りたい方は全微分へ。わからなくても積の微分みたいなものと思ってくださっても、ここでは、大丈夫です。)




つまり、総収入の変化率を近似すると

総収入の変化率=価格の変化率+需要の変化率

になります。

(※真ん中に+とありますが、価格の変化率が+の場合、需要の変化率は−に、価格の変化率が−の場合、需要の変化率は+になります。価格が1%上昇し、需要量が0.5%減少した場合、間違って「総収入は約1.5%変化した」とはしないでください。価格の変化率=+1%、需要量の変化率=−0.5%ですから、総収入は約0.5%変化したことになります。)

となると、弾力的なとき



つまり、



したがって、総収入の変化率が負であります。すなわち総収入が減少しています。

また、単位弾力的なとき



つまり、



したがって、総収入の変化率が0であります。ですから、総収入が変化していません。

最後に、非弾力的なとき



つまり、



したがって、総収入の変化率が正であります。すなわち、総収入は増加しています。もう一度述べますが、「近似値」です。正確な値から少しずれてます。例えば100円のものを100個売ると総収入は1万円です。価格が1%上昇して、需要量が1%減少すると、上の理論では、総収入が変わりません。しかし、101円が99個売れていますから、総収入は9999円です。総収入は1円減少していますね。これが厳密な結果です。近似した誤差として、1円の減少があるわけですね。このことに注意しておいてくださいね。

4つめ 直線の場合の証明

さきほど、直線の場合、価格が中間の時(つまり需要量も中間の時)に単位弾力的であると説明しました。では、本当にどんな直線でも中間の値の時に単位弾力的になるのでしょうか。ここでは数学的にそれを証明します。

直線の需要関数ですから


  

とします。D=0の時にP=b/a、P=0の時に、D=bですから、中間の値の時にP=b/2a,D=b/2となります。また、需要関数を微分するとdD/dP=−aとなります。それでは弾力性の定義に代入してみましょう。



となります。つまり、直線ならばその中間の値で弾力性は1になるということが証明されました。

とまぁ、ちょっと進んだ話でした。どちらかというと中級編の話題なんですけど、なんかすっきりしないなって思われるのは嫌だったので書き加えました。さて、次の弾力性の話、所得弾力性と交差価格弾力性の話にいきましょう。


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