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3.シェファードの補題 Shephard's lemma
さて、ここでシェファードの補題を紹介しておきましょう。これは、支出関数を価格で微分すると、補償需要関数が求まるというものです!財xの価格pxで支出関数を微分すれば、財xの補償需要関数が求まりますし、財yの価格pyで微分すれば、財yの補償需要関数が求まるのです。この補題は財の数を2財からn財まで増やしても成り立つ補題です。式で表すと
ということです。先ほど求めた、コブ=ダグラス型効用関数で試してみましょう!
ですから、
となりますね。y財について試してみても同じように求まります!証明をしてみましょう。
支出関数は、補償需要関数を用いると
となりますね。これをpxで微分してみましょう。そうすると
となります。
第一項は、財xの価格が上昇したために、買っていた財xの数量分の支出が増加した分。(たとえば、10円のチョコを5個買うときの支出は50円。10円のチョコが11円に値上がりすると、支出は55円。増える支出額はチョコ5個分×1円で5円。購入していた数量が支出の増加分になっている。)
第二項は、財xの価格が上昇したために、財xの需要量を減らし、支出が減った分。
第三項は、財xの価格が上昇したために、財yの需要量が変動し、支出が変動した分。(財yが増えるか減るかは、財xの代替財か、補完財かによる。2財しかないモデルでは、財xの価格の上昇は、必ず財yの需要量を上昇させる。つまり、代替財。)
したがって、示せばいいことは、
ということ。つまり、財xの価格が上昇したために、「財xの需要量を減らしたことによって、減らした支出額」が、「財yを増やしたことによって、増加した支出額」と等しいことを示せばいいということです。
さて、これを示すためには、支出関数は支出最小化問題を解くことによって得られたことを思い出さなければいけません。支出最小化問題は、
min
s.t.
ですから、ラグランジェ関数を用いて1階の条件を導出しましょう。支出関数は支出最小化問題を解くことによって得られたってことは、この1階の条件を満たしてなければいけないのですから。
です。したがって、
です。これを
に代入すると、
となります。もちろん、λ>0ですから、示したいのは、
ということです。上の式には、効用関数と補償需要関数がでてきていますから、この二つの関係を考えてみましょう。補償需要関数は効用を達成するために必要な需要量でしたね。したがって、財xを個、財yを個消費したときの効用はいくらでしょうか?そりゃあ、ですよね(笑)定義が、そうなんですから。したがって、
が成り立ちます。(この式は、3つめの1階の条件の式でもありますね。)もちろん、は達成したい効用水準ですから、価格とは無関係です。したがって、この等式を価格pxで微分すると
です。ところで、
ですから、
が得られましたね。これで、シェファードの補題の証明完了です!