支出最小化問題

presented by P-suke

トップページ > ミクロ経済学目次 > 支出最小化問題 1 2 



※途中で数学がわからなくなった方は左上からぴーすけ講座TOPへ行き、ぴーすけ講座数学へ行ってみてください。おそらく、探しているトピックがあるはずです。

1.イントロダクション

先ほどまで、学んできた行動は「効用最大化行動」でした。ここでは、「支出最小化行動」について学びます。効用最大化行動は、予算制約を満たす範囲内で自身の満足度(効用)を最大化する行動でした。遠足へ行くときにおやつ500円分までと言われた時を思い出しますね。500円という制約の中で、スーパーで必死に考え抜いておやつを買いそろえました。あの時の行動を説明するものが、今まで学んできた効用最大化行動です。しかし、考えてみると買い物の際、もう一つ、行動の種類があることに気づきます。それが、「支出最小化行動」です。これは最低限満たしたい満足度(効用)があり、その満足度を達成する条件のもとで費用を最小化する行動です。子供にハンバーグが食べたいと言われた母が、一生懸命スーパーでやりくりする姿が目に浮かびます。肉の量を減らして、代わりに豆腐をいれるのが我が家のやりくりでしたね。全部豆腐にして、豆腐ハンバーグにしないところが、子供心を理解してくれているなと思っていました。

まぁ、ということで、ここではその「支出最小化行動」を数式的に勉強していきましょう。シェパードの補題も確認しましょう。続いて、「効用最大化行動」との関係性、「双対性」と呼ばれるものも分析します。双対性を詳しく知るためにも、ここで間接効用関数も勉強しましょう。ちなみに、「効用最大化行動」と「支出最小化行動」以外にも家計の行動はありますし、みなさんが、より現実を分析する上で有力となる家計行動の数学的な記述をつくりだしてもいいのですよ。認められて、みんなに使われるようになるのには苦労するかもしれませんが。

2.支出最小化問題

さて、数学的に表記しましょう。

効用最大化問題と同じく財の種類は2つ、財xと財yがある場合を分析します。ここでx,yはそれぞれの財の数量を表します。まず、最低限満たしたい効用があるわけですから、それをとします。したがって、制約は効用が以上であるということです。数式ですと



ということになります。ここでは効用関数を と、コブ=ダグラス型としておきましょう。(他の形で解くのは割愛します。ほとんど効用最大化問題で解いた方法と同じですから。)ですので、制約は



ですね。ところで、それぞれの財の価格を とすると支出e(expenditureの頭文字)は



となります。(ネイピアの数(自然対数の底)と混合しそうなので、気を付けてください。)これを、さきほどの制約のもとで最小化するわけですから、条件付き最適化問題は



となります。厳密には制約式が不等式ですからクーンタッカーを使うところですが、この問題では制約は等号で成り立つ場合しかありませんので、ラグランジェ未定乗数法で解きます。(もしも、制約が強い不等号で成り立っている状態で支出最小化ができたとします。しかし、制約が強い不等号で成り立っているということは「今得ている効用は最低限満たしたい効用よりも大きい」ということになります。ということは、財xや財yの消費量を少し減らしても最低限満たしたい効用を得ることができます。そうすると、制約が満たされているのに、支出を更に減らせたのですから、これは支出を最小化していることと矛盾します。「制約が強い不等号で成り立つもとで支出を最小化している」ことはありえないのです。数学的な証明はいつかするかもしれません。)ラグランジェ関数は



となり、1階の条件は



となります。1つめの式と2つめの式から、



となります。これは効用最大化問題でもでてきた価格比=限界代替率(MRS)ですね。この式と3つめの式(制約式です。)と連立させると







と、もとまります。それぞれ、価格が決定されると消費量(需要量)が決定されている式ですから、これは需要関数です。しかし、効用最大化問題で解いた式も需要関数でした。効用最大化問題と何が違うのでしょうか。それは需要関数に所得が影響を与えているか、効用が影響を与えているかの違いです。価格と満たしたい効用で決定される需要関数を補償需要関数(compensated demand function)といいます。ほかにも効用最大化問題で解いた需要関数をマーシャルの需要関数と呼んだように、支出最小化問題で解いた需要関数をヒックスの需要関数(Hicksian demand function)と呼びます。ヒクシアンとも言いますね。ここでは、ヒックスの頭文字をとってhを用いて補償需要関数を表しましょう。



と、なるのです。まぁ、効用最大化問題は予算を制約にしていたのですから、所得の変化が影響を与えますし、支出最小化問題は効用を制約にしていたのですから、効用の変化が影響を与えるのです。さて、補償需要関数を支出に代入してみましょう。そうすると、



と求まります。これはつまり、支出が価格と効用によって決定される式となるわけです。これを支出関数(expenditure function)と呼びます。関数であることを明示的に表すために支出関数を



と表記しておきましょう。したがって、支出最小化問題において求まるものは補償需要関数と支出関数



なのです。どれにも効用水準が入っていますね。これらの関数は効用水準が需要量と支出額へ影響を与えますから、効用最大化問題で行ったような単調変換を行ってはいけません。序数的な効用ではなく、基数的な効用となっているのですね。次のページでは、シェパードの補題を確認した後、双対性に詳しくしるために「間接効用関数」についても学びましょう。


目次に戻る    次のページへ