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4.ラグランジェ未定乗数法の簡単な証明
さて、ラグランジェ関数によって求められた値が必要条件であることの証明を行います。厳密な証明では陰関数の定理を使うのですが、ここでは少し厳密さをなくして、全微分を用いて簡単な証明を行います。
今関数f(x,y)がg(x,y)=cという制約のもと、点(x*,y*)で最大値をとっているとします。関数f(x,y),g(x,y)はそれぞれ微分可能であるとします。制約式を全微分すると
である。また、f(x,y)はg(x,y)=cという制約のもと、点(x*,y*)で最大値をとっているため
である。したがって、点(x*,y*)に十分に近い点において(2変数の(x*,y*)における1次のテイラー展開のほうがいいかも。)
先ほどの制約式から導き出した式を代入すると
したがって、
となる。しかし、dxは正にも負にもなりうるため、この不等式を満たすためには
とならなければならない。ここで
とおくと
という式が得られる。また、λとおいた式より
が得られる。また、制約式より
という式が得られる。これら三つの式
が最適値では満たされていなければならない。しかし、三つも覚えるのは面倒なので、
というラグランジェ関数を定義し、ラグランジェ関数をそれぞれの変数で偏微分し、0とおくと
となり、さきほどの必要条件が得られるのです。
厳密な証明を行うためにはdxやdyを使うよりテーラー展開により、ΔxやΔyを使ったほうがよかったですね。そして、極値では符号が変わらないため、この不等式を成り立たせるためにはΔxの符号が0でなければならない!という結論がいいです。
さて、ラグランジェ関数の計算例を少し載せます。
subject to
として、x,yをそれぞれPx,Py,Iの関数として書き表しましょう。
ラグランジェ関数を
と定義します。1階の最適化条件は
であるので、一つ目の式より
二つ目の式より
λを消すためにこの二つの式で比をとると
両辺を約分すると
式変形をして
最後に三つ目の式(つまりは制約式)が
であったから、代入すると
式を整理すると
である。また、これを
に代入すると
となる。これは、ミクロ経済学の消費者理論での予算制約下でのコブ=ダグラス型効用関数から需要関数を導き出す例題です。次の例題に行きましょう。
subject to
として、LとKをw,r,yを用いて表しましょう。
ラグランジェ乗数を
とする。1階の最適化条件は
となるから、一つ目の式と二つ目の式からλを消すために移行して比をとると
したがって、
これを三つめの式に代入すると
また、この式を
に代入すると
となる。したがって、LとKがr,w,yの式として表すことができた。これはミクロ経済学での生産者理論における、条件付き要素需要関数をもとめる例です。ここで求めたLとKを目的関数に代入すると費用関数が得られるのです。詳しくはミクロ中級編で。(まだ製作途中ですけど)
3ページ目が異常に長くなってしまいました(^_^;)4ページ目を作ればよかったです。制約付き最適化問題は本当に多様するので、計算方法に慣れておくことをおすすめします。これでこの章を終わりにしたいと思います。